特別な治療

電気治療

当院では平成16年7月からサイマトロン(パルス波治療器)を導入し、修正型電気痙攣療法(m-ECT;modified electric convulsion therapy)を実施しています。m-ECTは、旧来型(木箱)の電気痙攣療法に、近代的麻酔科学の手法を加え、患者さんが眠っている間に、痙攣発作なしに脳への刺激効果が得られる治療法です。電気痙攣療法の有害事象は、薬物療法に比べると少ないと言われています。
当院のECT室は、麻酔科医・精神科医各1名、専任看護師3名、記録者1名の態勢で、月・水・金もしくは火・木・土の隔日でm-ECTを実施しています。午前9時に開始し、12時までに6例の治療体制を組んでいます。当院の平成29年度の実施件数は74例、ECTの実施回数は559回です。

m-ECTと旧来型の共通点・違う点

共通点

両者に共通して求められるのは治療前の絶飲絶食です。このため前夜から隔離室で過ごしていただきます。これは痙攣発作時に、胃の内容物が気管内に逆流し窒息事故を起こすことを防止するためです。隔離室で過ごすことは治療を受ける側にとって苦痛ですが、腦に痙攣発作を起こす治療の中では、逆行性健忘症や場所・時間の失見当識が生じる場合があり、絶飲絶食が守れない方がいるため、当院では安全の観点から必須条件にしています。
逆行性健忘症や場所・時間の失見当識といった一過性の有害事象は、治療終了後10日ほどで回復しますが、うつ病の患者さんでは有害事象に関して強い不安を生じることがあり、治療前に充分な説明を行なっています。

違う点

両者の根本的な違いは筋弛緩剤の使用の有無です。

m-ECT 筋弛緩剤を使用することで骨格筋の痙攣が生じないため、年齢の制限なく実施できます。治療には麻酔科医が必要で、呼吸・循環を含めた全身管理を行います。また、「サイマトロン」と呼ばれるパルス波治療器(定電流)を使います。脳に流す電気量を精神科医が決めると、流れる時間はサイマトロンが自動的に決めます。最初に流す最適・最小の電気量を決めることが、精神科医の最重要な仕事になります。
旧来型(木箱) サイン波治療器(定電圧)を使います。全身の強直性・間代性痙攣発作を生じるため、主に骨折の問題で高齢者には実施できません。治療は精神科医のみで行ないます。どの患者さんにも同じ電圧で電気が流され、時間は治療者が決めることになります。
また、逆行性健忘症に関しては、流す電流の強さを調節できない旧来型の方が強い印象があります。

クロザリル/治療抵抗性統合失調症の治療薬

統合失調症は大部分は良くなる病気です。しかし、お薬や作業療法、カウンセリングなどで十分に治療しても治りにくいタイプがあります(治療抵抗性統合失調症とよばれています)。また、症状改善しても副作用のために、せっかくのお薬での治療を止めなければならないことがあります。そのような耐用性不良と呼ばれている統合失調症の治療薬として、有効性を世界中で認められているお薬があります。
それが、クロザリルです。

処方状況

日本でも平成21年から使われています。平成30年5月28日現在では、全国で約7,000人の方に処方されています。熊本県では、桜が丘病院など10の精神科病院で処方できるようになっており、200人近くの方が使用されています。
非常に有効性の高いお薬ですが、他のお薬以上に副作用に注意が必要なお薬で、病院では慎重に処方しています。

注意点について

最も注意しなければいけないのは無顆粒球症と言われる病気です。無顆粒球症というのは、細菌などから体を守る白血球の中の顆粒球(顕微鏡で見た時に細胞の中に小さな粒々が見えることから、顆粒球と呼ばれます。好中球と呼ばれることもあります)と呼ばれる成分の細胞が減ってしまう病気です。クロザリルにはその他にも副作用がありますが、注意して使用すれば、治療抵抗性統合失調になくてはならないお薬です。
そのため、副作用を防ぐ厳重なシステムがあります。まず、副作用を早くみつけて防止する目的で、定期的に血液検査を行います。この血液検査の結果を「クロザリル患者モニターリング・サービス」(CPMSと呼ばれています)に報告し許可をもらった上で、クロザリルは処方されます。

当院での処方について

桜が丘病院では、現在11名の方にクロザリルを処方しており、2名の方が待機中です(2019年6月現在)。
クロザリルの使用にあたっては、事前に丁寧に説明し、同意をいただいてからの処方となります。
ご希望の患者さん・ご家族の方は、治療を受けておられる主治医の先生と相談し、クロザリルの説明をうけ、これまでの治療経過からCPMSの基準に一致するかを判断していただいてください。その上で、ご希望の方に処方いたします。

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