治療の中では、「からだ」の面、「こころ」の面、「環境」の面に、それぞれ働きかけながら、症状の改善と再発予防をはかっていきます。さまざまな専門療法を組み合わせることにより、治療効果が高まります。
専門療法
治療の3つの要素
「からだ」の治療/生物学的治療の実施
こころの病気の治療では、脳を休め、バランスを整えていくことが必要です。そのため、適切な薬物療法や修正型電気痙攣療法(m-ECT)によって、脳内のバランスを整えていくことが必要です。また、入院後の生活は、ご本人の自然治癒力を最大限引き出すことを目的とし、充分な休養(睡眠)・栄養のある食事(栄養指導含む)・適切な心身への刺激が保たれるよう計画されています。
「こころ」の治療/精神的安定をはかる
こころの病気の治療では、不安や悩みを、ひとりで抱えこまないことが大切です。そのため、医療者との対話(精神療法)が治療の中で重視されています。当院では、様々な専門職が患者さんに関わります。一緒に、解決法をみつけていきましょう。また、同じ病気の患者さんが集まり、皆で病気の勉強会に参加するなどして、病気の治し方、再発予防を学んでいきます。なお、うつになりやすい考え方のクセ(例えば、完璧主義、他人にまかせることができない)を持っていらっしゃる方もいます。そういった考え方のクセを、やわらげていく認知行動療法的介入も行ないます(心理療法)。
「環境」の治療/生活上の問題解決
こころの病気の治療では、心身の治療だけでなく、患者さんの生活環境を整え、ストレスを減らしたり、ストレスの対処法を学んでいったりする必要があります。当院では、患者さんご本人の生活力を取り戻すリハビリテーション(作業療法)に力を入れると共に、退院支援・生活サポートの一環として、退院後の生活相談、復職支援、また、ご家族対象の病気の勉強会など、様々な取り組みに力を入れております。
精神療法
入院中は回診が定期的に行われます。診察の中で、医師に、ご自分の症状や抱えている悩みを伝えながら、問題を整理し気持ちを安定させていきます。
また、当院では、医師以外にも様々な専門職(看護師・薬剤師・作業療法士・臨床心理士・精神保健福祉士)が患者さんに関わりますので、必要なことを相談することで、安心して治療に取り組むことができます。
薬物療法
薬によって作用に違いがあり、医師は患者さんの症状によって使用する薬を決めます。また、副作用を極力避けるため、少しずつ薬の量を増やしていきます。
代表的な薬の種類
抗精神病薬 | 幻聴や妄想を改善します。気分や意欲をあげます。 |
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抗うつ薬 | うつ状態の改善、気力や意欲をあげます。 |
気分調整薬 | 気分の浮き沈みを安定させ、再発を防ぎます。 |
抗不安薬 | 不安な気持ちや緊張をやわらげます。 |
睡眠薬 | 寝つきをよくしたり、気持ちのよい眠りを保ちます。 |
薬を飲む時に覚えておいてほしいこと
薬の効果
薬には、脳内のバランスを整える働きがあります。精神科の薬は、他の病気の薬と違い、効果を感じられるまでに2〜4週間程度かかります。
副作用
薬には合う合わないがあるため、時に副作用が出る場合があります。患者さんの中には、副作用に驚いて、薬を飲まなかったり、減らしてしまったりする場合もありますが、まずは医療スタッフに相談し対処法を一緒に考えましょう。薬剤師に、自分の飲んでいる薬について相談もできます。
服用期間
薬は、症状がよくなっても、再発予防のためにしばらく飲み続けることが必要になってきます。薬の依存性や習慣性を心配される方もいらっしゃいますが、医師の指示に従って使用すれば問題ありません。
自己判断の危険性
治療を終えるときには、医師は時間をかけてお薬を減らしていきます。精神科の病気は再発の危険性が高い病気ですので、自分の判断で薬を減らしたり、やめたりすると危険です。特に自己判断で、急に薬を飲みやめると離脱症状が出る場合があるため用心が必要です。
服薬指導
現在服用している薬の効果、飲み方、注意点及び副作用の初期症状などを、薬剤師が説明します。患者さんと話をしながら、薬に対する不安の解消、薬物療法に対する意識の向上(服薬の重要性・服薬中断のリスク)、副作用の防止や早期発見につなげます。
栄養指導
集団栄養食事指導
集団栄養食事指導は、急性期病棟を除く3つの病棟で2ヶ月に1回行っています。
統合失調症の患者さん対象
内容をシンプルに分かりやすくし、少しでも興味を持っていただけるよう工夫しながら、数種類の内容を繰り返し伝えています。(内容例:ジュース、砂糖、間食、嚥下など)
うつ病の患者さん対象
食べものと体調の関係をテーマに、患者さん自身の体調やこれまでの食生活を振り返っていただきながら、食事や食べ物の面からの体調改善をサポートしています。
外来・入院栄養食事指導(個別指導)
個別指導は、入院・外来ともに主に生活習慣病の方を対象に行っています。
精神科の病気は食生活を乱してしまうことも多いため、患者さん一人ひとりが抱えている食生活の問題点を拾い、できそうな改善策を一緒に考えていきます。
作業療法
精神科のリハビリテーションは、作業療法と呼ばれ、精神療法・薬物療法と共に大事な治療のひとつです。リハビリテーションに重要なのは、ご本人が生活を振り返り、課題点に気づき、主体的にリハビリに取り組むことです。作業療法は、継続的に行う事で新しい生活スタイルを獲得し、ストレスに耐えうる「心と身体の体力を作る」きっかけとなる大切な治療です。
はじめは、興味があって楽しいと思える負荷の少ないことからスタートします。そして、各々にとって意味のある作業を用いて小さな達成感から成功体験とします。それを重ねることから心の元気へとつなげていきます。
回復過程の後半は希望される生活に適応するために、負荷のかかる訓練的な作業療法も行い自分の傾向をつかむことも重要としています。作業療法士と目標について十分に話をしながら共に治療へ取り組みましょう。
心理療法
主治医からのオーダーを受け、臨床心理士が、患者さんの心理面を支援します。
心理検査
心理検査は、主治医の治療方針に基づき、患者さんの状態に合わせて実施します。検査には、さまざまな種類の検査があります。患者さんにとって必要な検査を受けていただくことで、自己理解を深めることを支援します。
心理教育
当院では、病気の正しい理解と正しい対応を身に付けていただくために、患者さんやご家族向けに定期的に勉強会を開催しています。同じ病気の患者さんや、その家族が集まり、皆で、症状・治療法・再発予防について学んでいきます。
カウンセリング
こころの治療では、不安や悩みをひとりで抱え込まないことが大切になります。そのため、医療者との対話を重視し、病気を引き起こした原因やその対処法を一緒に考えていきます。
必要な方には、さまざまな心理療法の技法(自分の考え方のクセに気付き行動を修正する認知行動療法・心身のリラックス法を学ぶリラクゼーション・自分を表現する描画・自己と向かい合う箱庭療法や動作法など)を用いた支援を行います。
退院支援
各病棟・外来には担当の精神保健福祉士がおり、患者さんやご家族様のご意向をお聞きし、退院に向けて以下のような相談業務を行っております。
- 療養上の環境調整
- 住宅(入所施設などを含む)の維持確保
- 医療費、生活費などの経済問題調整
- 社会制度の利用調整
- 就園、就学、復学、転校などの教育問題の調整、支援
- 診断書(障害年金、生命保険、傷病手当など)依頼業務
- 日常生活上の調整、支援
- 退院にあたっての調整、支援
- 治療及び生活上の心理情緒的支援
- 医療における人権擁護
- 職場復帰支援
- 家族調整、面接
- ケースカンファレンス、ケア会議への参加、開催
- グループ活動への参加