クロザピンとは

クロザピン

クロザピンは、治療抵抗性統合失調症に有効性を認められたお薬です。

クロザピンについて

薬物療法の進歩により統合失調症の大部分は良くなる時代となりました。しかし、お薬を飲んでも思うように症状が改善しない治療抵抗性統合失調症と呼ばれる統合失調症があります。治療抵抗性統合失調症とは、

  • 十分な薬物療法を行っても治りにくい反応性不良
  • 効果があっても副作用のためにお薬を中止しなければならない耐用性不良

という2つのタイプの統合失調症です。
このような治療抵抗性統合失調症を対象として、世界で唯一有効性が認められているお薬があります。それが、クロザピンです。

クロザピンの特徴

2011年から日本でも処方可能となり、退院や社会復帰をされた治療抵抗性統合失調症の方も少なくありません。クロザピンは、

  • 幻覚や妄想の改善
  • 認知機能の改善
  • 攻撃性や暴力の改善

に期待ができます。また、統合失調症患者の自殺率を低下させると報告された唯一のお薬でもあります。

注意点について

クロザピンは有効性の高いお薬ですが、他のお薬以上に副作用に注意が必要です。主な副作用には、

  • 顆粒球減少症
  • 心筋炎
  • けいれん

などがあり、最も注意しなければいけないのは顆粒球減少症です。

顆粒球減少症は、細菌などから体を守る白血球の中の顆粒球(好中球)が減ってしまうため、感染症を起こしやすくなります。そこで、患者様が安心してクロザピンを飲んでいただくために、定期的に血液検査を行います。また、桜が丘病院では国立病院機構熊本医療センター血液内科とも連携しています。

モニタリングシステムについて

クロザピンによる治療を安心して受けていただくために、クロザリル患者モニタリング・サービス(CPMSと呼ばれています)という第3者機関に血液検査を報告することが義務づけられており、CPMSによる承認後、クロザピンは処方可能となります。

モニタリングシステム

患者さんへのご案内

クロザピンによる治療を受けるためには、原則26週間の入院が必要です。条件が整えば18週間での退院も可能ですが、ガイドラインや経験からも26週間が経過すれば顆粒球減少症の危険性も少なくなることが分かっています。
もちろん入院中に症状が改善し副作用がなければ、医師の判断で外出や外泊を行うこともできます。26週間が経過したら退院も可能となり、外来に通院していただきながらクロザリルを処方していくことになります。

当院での処方について

事前に有効性や副作用について丁寧に説明し、同意をいただいてからの処方となります。桜が丘病院では安心してお薬を飲んでいただくために、

  • 10年以上のクロザピン処方経験を持つ医師が処方
  • クリティカルパスを用いた患者様の体調管理

を行っています。また、医師・看護師・心理士・薬剤師などによる多職種チームが、患者さん・ご家族の方々の精神的・身体的サポートも行います。

当院での取り組みについて

クロザピンは個別性の強いお薬であるため、処方を受ける方の症状やニーズに応じたきめ細やかな処方が必要です。また、歴史のあるお薬ですが、ハロペリドールやバルプロ酸ナトリウムなどのように基準となる血中濃度も存在しません。現在、全国でも550の医療機関でクロザリルの処方が行われていますが、大部分が患者さんの症状や治療経過を観察しながら、医師の経験に基づく処方が行われているのが現状です。もちろん医師の貴重な経験に基づく処方は重要ですが、客観的データを参考にした科学的根拠に基づく判断も必要と考えます。このような観点から桜が丘病院では定期的に血中濃度を測定し処方に役立てています。

血中濃度測定について

クロザピンの血中濃度を測定する意義は大別して2つあります。その目的は

  • 血中濃度をモニタリングしながら病状に応じたきめ細かな処方の調整
  • けいれんや傾眠などの副作用対策

です。副作用は血中濃度に比例して出現するわけではありませんが、血中濃度を測定することによりに副作用の出現を予測することも可能になります。

クロザピンをご検討中の方へ

クロザピンをご検討中の患者さん・ご家族の方々には、

  • クロザピンは本当に効果があるの?
  • クロザピンを飲んでみたいけどこに相談したらいいの?
  • 副作用は大丈夫なの?

などとクロザピンによる治療効果に疑問がある、副作用のことが心配でクロザピンによる治療を躊躇している、相談窓口が分からないなどの理由でお悩みの方々もいらっしゃると思います。桜が丘病院ではクロザピンを考えていらっしゃる患者さんの受け入れはもちろんのこと、ご相談にも親身に対応いたします。お気軽にご相談ください。
また、桜が丘病院以外の病院に入院中または通院中の患者さん・ご家族の方のご相談も随時受け付けています。ご希望の患者さん・ご家族の方は、治療を受けておられる主治医の先生にご相談のうえご連絡ください。お待ちしています。

医療関係者の方へのご案内

クロザピンを処方するためには血液内科との連携が義務づけられていることもあり、クロザピンの処方ができない医療機関にご勤務されている先生方もいらっしゃると思います。治療抵抗性統合失調症の患者さんを担当しクロザピンをご検討中の先生方がおられましたら、ご相談をお待ちしています。

すでにクロザピンを処方されている先生方のなかには、血中濃度に関心をお持ちの先生方もいらっしゃると思います。桜が丘病院では、秋田大学と協力した高速液体クロマトグラフィによる血漿中クロザピンおよび活性代謝産物の濃度測定を行い、前向きコホート研究に取り組んでいます。患者さんの同意や倫理的側面への配慮が必要ですが、私たちの研究にご賛同していただける先生方がいらっしゃいましたらご相談ください。ご提供いただいたサンプルの血中濃度のデータはもちろんのこと、ご希望される場合は桜が丘病院のデータも併せてフィードバックさせていただきます。なお、共同研究に関する事務的手続きなどに関しましては個別で対応させていただきます。

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