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月間特集 院長コラム

桜が丘病院リニューアルとこれからの地域連携

桜が丘病院 院長 赤木健利

桜が丘病院 院長 赤木健利

うつ病の治療について昨今さまざまな討論がなされるようになった。いろんな視点からの錯綜する情報が、少なからず治療現場に混乱をもたらしていると思う。そのひとつは診断区分である。うつ病と一口に言っても病像や発病の契機、治療上の問題、薬物療法の効果などはそれぞれに違う。そういった中、さまざまなうつ症状を呈する患者さんが治療を求めて来られる。

昔、うつ病は几帳面生真面目な頑張り屋さんがかかる「心の風邪みたいな病気」だから「薬飲んでおいしいもの食べて休んで寝ていると治る」と習ったような気がする。確かにそんなタイプのうつ病もあるが、精神科病院に来られるうつ病にはむしろ少ないタイプである。逆に、治療で薬を飲んで寝てだけいると、かえって症状が固定化したり悪化したりすることもある。

うつ病になる要因も様々である。人に襲いかかるストレスも複雑になってきたが、それをストレスと感じてしまうストレス耐性にも個人差が大きくなってきている。世の中の価値観が変わってきたせいもあるかもしれない。男女差、年齢差、人間関係、仕事など環境要因、経済問題、家族関係のもつれなど。また、幼いころのトラウマ体験が大人になって顕在化してうつ状態になる若い女性も増えている。

定型うつ病がメランコリー型うつ病と教えられてきたので、その他のうつ病が非定型などと呼ばれるハメになったが、最近では「もともと定型・非定型などはない」ともいわれる。確かに現れる症状は抑うつ気分、意欲減退、喜びの喪失などの症状であろうが、そこに至る要因はさまざまである。

うつ病の治療を、現場で多職種によるチーム医療で進めていくには各職種の納得できる合意が必要であり、診断も医師の診断だけでなく、看護師、精神保健福祉士、臨床心理士、作業療法士、などそれぞれと共通の理解、各職種による診断のもとで治療・援助を進めていかなければならない。さらに患者をグループ化していく必要性も高い。共通の要因を持つ人たちに集団療法として取り組むことがたいへん効果がある場合が少なくないからである。

 桜が丘病院では、これまでの「いろんなうつ病」の中から「働くひとたちのうつ病」と「高齢者のうつ病」を選び出し、治療の標準化をはかろうとしている。心理教育やデイケア(職場復帰プログラムなど)に取り組んだり、あるいは高齢者の地域でのケア(心理的ケアと身体的ケアを地域の医療・行政機関などとも協力しながら)に取り組む方針を作成中である。

その他のうつ病についても、少しずつグループ化と個別化をうまく結合させて取り組む必要があると考えている。たとえば、これから増えていくと思われる地域メンタルヘルス(予防)活動や、依存症(=アディクション)患者のうつ病(自殺や犯罪に絡むことが多い)、PTSD患者のうつ状態、若い女性の難治性うつ病(新型うつ病や非定型うつ病)、統合失調症患者の気分障害などである。

院内での治療の標準化や治療形態の工夫など、やっていかなければならない課題は多いが、これらの分野はすべて桜が丘病院だけでやれるものではない。他の進んだ取り組みをしておられる協力病院や地域連携クリニックや保健センターなどと連携してやっていかなければならないと思う。

桜が丘病院のリニューアルは、これまで以上に、うつ病に特化した病院づくりを進めていくという医療活動方針のもとに進められている。増え続けるうつ病、ますます混乱する治療現場や地域連携など、これからのうつ病治療の礎になれればよいと思う。